知人に乗り物酔いにひどく悩んでいる人がいます。都内在住なので普段は車に乗らなくても移動は事足りていますが、必要に迫られてバスやタクシーに乗る場合に、非常にげんなりするとぼやいていました。
乗り物酔いの主な原因は、体は動いている・移動していると感じているのに視覚から入る情報に変化がない時に、脳がそのずれを異常と判断するから。車の運転手が車酔いをしないのは、車の加速・減速、カーブ曲がるなどの流れる景色を常に目で追っているから、視覚と体の感覚にズレが無いためです。
逆に後部席に座る人は前席シートにより視界を遮られがちになる為、酔いを発生させやすい環境になります。酔いやすい人は、助手席に座ると良い。もしくは後部席に座らざるを得ない場合でも、前方を見られる中央の席に座ることで酔いを予防しやすくなります。
乗り物酔いを全くしないという人もいます。運転中の車の中で本を読むような、視界を一か所に集中させているのに平気でいられる人。そういう人は体の動きを感じる器官である、三半規管が強いからという話を聞きます。
三半規管を強くすればよいというならば、どうしたら鍛えられるか。この器官は身体の平衡・バランス感覚を制御しています。つまり、バランスを取るのが必要な運動をたくさん行えば、三半規管が鍛えられることになります。
トランポリン、ブランコ、マット運動などがバランス感覚をフルに使う為、非常に効果的です。道具が無くとも、後ろ歩きをしたり、目をつぶって歩いても三半規管を鍛えられます。
(目をつぶるだけで?)と思った人は、試しに瞼を閉じて10歩進んでみてください。1歩目を踏み出そうと片足を上げた所で体が大きくふらつく筈です。歩幅は目を開けて歩くときの半分くらいになり、転びそうで思わず手が前にでてしまうのではないでしょうか。
手軽でありながらバランスを活用する効果が高い運動なので、乗り物酔いを克服したいという人は是非やってみると良いと思います。
トレーニングによる克服も良いが、もっと即時的に乗り物酔いを解消できるものは無いか思う人もいるでしょう。
酔い止めの薬は、効果が出るまで多少時間が掛かり、乗り物に乗る30分前に飲んでおかないといけないとか服用の間隔を数時間開けないといけない等、飲むタイミングを気にする煩わしさがあります。ツボを押すという対策も、薬の様にタイミングを気にせずとも人によって効果はまちまちです。色々と乗り物酔いの解消方法はありますが、それぞれ一長一短があります。
そのような中、近年、特殊デバイスで乗り物酔い対策をしてみようとする、海外企業が出てきました。独国のホロライド社です。
ホロライド社は「あらゆる車を動くテーマパークにする」という理念を掲げています。そんなホロライド社が提供する乗り物酔いの解消方法は、VRグラスを使ったものです。
VR技術を使い、疑似的な視覚情報を現実の車の動きと連動させることでそのズレを無くしました。
VRでプレイするゲームの中の背景が、現実世界の車の加減速に同調して流れていく。車が進路方向を変えれば、VRの風景もそれに合わせて回転する。乗り物酔いの原因が取り払われ、ホロライド社のシステムは、車中を純粋に人を楽しませる空間にするわけです。
非常に興味深いですが、残念ながら今の所、日本国内ではホロライド社はサービスを展開していません。展示会での出展も国内では全く無く、デモの体験も出来ない状況です。
またホロライド社のシステムと連動できる車は限られていて、アウディ社がホロライドシステムに対応出来るよう開発した車種のみです。アウディ社は、ホロライド対応車を日本に展開する予定だと表明していますが、その時期は未定としています。
ただ、ホロライド社は、アウディ社以外の車ともホロライドシステムを連動できるようにする装置「retrofit(レトロフィット)」も用意していて、これは車のフロントガラスに吸盤で取り付けるだけで、ホロライドシステムと車の動きを連動できるようにする物です。
根本から対応するよう開発されたアウディ車との差は多々あるでしょうが、ホロライドシステムの適用範囲は大きく広がることになります。酔いやすいからと高速バスの利用を敬遠していた人も、寧ろ移動中の時間を楽しめる可能性があるわけです。
このレトロフィットは一応、ホロライド社のWebサイトにてオンライン販売しているのですが、それは独国・豪国のみに限定されています。
レトロフィット単体価格で199ユーロ。VRグラス、VR用コントローラーとのセットで699ユーロ。日本向けにも販売されれば良いなと日々、ホロライド社サイトをチェックしております。
シン