「いつか使うだろう」と取っておいたものが、結局使われないことがある。
後で役立つだろうと思いながら、その時はとうとう訪れない。
たとえば、家具を組み立てた際に余った予備のねじや、棚の上に積まれたままの空き箱がそれだ。
「どこかで必要になるはず」と心の片隅にしまい込んだものは、いつの間にかその「必要」とは何だったのかさえも曖昧になってしまう。
どんなに価値のあるものでも使うべき時を逃せば、その存在意義を失ってしまう。
大切なのは、「今、役立つかどうか」だ。
時が過ぎてしまえば、その価値がどれほど高くても意味を持たなくなる。
もちろん、未来のために備えることも重要だ。
しかし、必要のないものをいつまでも抱えていては、逆に身動きが取れなくなる。
使わないものや過去の必要性に縛られるのではなく、思い切って手放す。
身も心も軽やかになること。そうした決断もまた、未来に向けた重要なステップではないか。
情報についても同じことが言える。
どんなに革新的なお役立ち情報であっても、それを必要としない人には「無駄」に感じられてしまう。
例えば、トレンドの食材や調理法が紹介されても、料理に興味がない人にとっては困惑を招くばかりだ。
受け手の関心やニーズがなければ、どれほどの価値があっても、伝わらない。情報の価値は、それを受け取る人との関係で生まれるのではないか。
物の話ばかりをしてきたが、人間もまた同じだ。
現場での仕事において、自分の力の発揮する場を誤り、無駄なことをしていないだろうか。その時に本当に必要な行動を見誤っていないだろうか。
やるべきことを間違えれば、どれほど頑張ってもそれは成果につながらず、結果的に「無駄」になってしまう。
私たちを取り巻く環境は、常に変化する。
技術が進歩すれば、それまで作っていたものが陳腐化する。
景気が変わり、世間のニーズが移り変わる。
法令が変われば、新たな安全基準に対応しなくてはならない。
プロジェクトの方針だって変わる。
どんなに現在のやり方が適切に見えても、環境が変われば、それも時には役立たなくなる。
変化の中でどのように働くべきなのだろうか。
一人で抱え込んでいても答えは得られない。
自分一人の考えに固執せず、現場の同僚や上司、チームメンバーと情報を共有することが必要だ。
異なる視点、知識を持つ人たちと意見を交換すれば、一人では気付かない新たな解決策やアプローチが見えてくる。
チームとしての協力やコミュニケーションが助けになってくれる。
無駄な作業を省き、高い品質の成果を提供するのはもちろん大切だ。
しかしそれだけでは不十分だ。
自分が提供する情報や作業が、「今、誰にとって必要か」見極める事。
そして、その必要なものを的確に提供すること。
これが目指すべき「お役立ち」ではないだろうか。
しん