姉弟の距離感

私には姉が居ます。
私と姉は滅多に会話をしません。
しかし、不仲という訳でもないと思います。
このコラムは我が家の姉弟の不思議な距離感を記したものです。

先月のある日、姉から「今度の日曜日空いているか」を聞かれました。
姉からこんな誘いがあったのは、これで人生二度目の出来事です。
前回は一年前ほどに、ダーツの練習に付き合って欲しいという誘いでした。
その時も心底驚いて、当日どんな話題が飛んでくるか一日中ヒヤヒヤしていました。
またダーツの誘いかなと思っていると、予想の斜め上の言葉が飛んできました。

「今度籍を入れるから、相手の家族とご挨拶するのだけど、来たい?」と。
そう言う姉は、全くもってどちらでも良いといった表情で。

私はお相手の方が「弟さんも是非」と気を利かせたのかなと勘繰りました。
我が家は母子家庭なので、母だけ連れて行く予定だったようでした。
偶然その日曜には予定がなかったので、ひとまず承諾することにしました。
この会話だけで今年一番姉と話したなと思いながら。

ご挨拶当日の朝。準備を終えて自宅のリビングのソファに腰掛けていると、
「何話したらいいと思う?」と姉。
「さぁ」と私。
私もこういったご挨拶に立ち会うのは初めてなので、何も知りません。
姉も悩んだり緊張したりすることがあるのだな、と思いました。

その後、都内の喫茶店で待ち合わせ、お相手のご家族とご対面しました。
天気の話から入り、堅苦しいご挨拶も済ませ、順番に自己紹介をしていると、
お相手のご両親から「弟さん、お仕事は何を?」と深掘りされることがありました。
そこからITエンジニアの職業と、四年の大学を出て約一年間の営業職を経てから、
天職だと思える現在に至るまでの経緯について、しばらく私から話しました。
お相手のご家族には「素敵な弟さんだ」と受けが良かったようで、
その後も話が弾むことができました。

ご挨拶を終えた後、お相手のお父様から名刺を渡される機会がありました。
こんなこともあろうかと私も名刺入れを持ってきていたので名刺交換をして、
帰り道に名刺の連絡先へ御礼のメールを送り、姉にその旨を伝えました。

姉の前で外面の私を見せることが初めてだったからか、大変驚いていました。
「あんなに話しているところ、初めて見た」
「それはお互い様だと思う」
間違いなく、今日だけで一生分の姉の話す姿を目にしたと思います。
「名刺持ってきていたの、ナイス」
姉から褒められたのも、片手で数えられるほどの回数だった気がします。

私と姉は滅多に話すことがありません。
他所の家族の姉弟を比較してみると、不思議な距離感だと思います。
ですが、お互いに嫌ったりしている訳ではありません。
むしろ、この同じ母子家庭で育った身として信頼と尊敬をしています。
姉が私に助けや支えを求めることはないでしょうが、
今日は少しでも弟らしいことが出来ていたら嬉しいな、と思った日でした。

こう

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