ファンキーモンキーベイビー ~キャロルの時代~

中学3年生の春に、家から3キロほどの隣町の映画館に行った。
家族よりも一緒にいる時間が多い友人と、いつものように馬鹿話をしながら、いつものようにてくてく歩いて通っていた中学校を越えて行った。
私達は学生服姿で頭はもちろんボウズ。後ろから見たらどっちがどっちか分からない。そこにちゃんと学帽を被っていた。
日曜日なのに学生服を着ていた理由は忘れたが、何かの用事が有って正装だったのだろう。
その帰りに友人が映画を観たいと言った。友人は戦争ものの映画に目がなかった。
田舎の木造の映画館でやっていた映画は2本立てで、1本は少年兵の悲劇を描いた戦争もの。もう1本は不良やスケバンが出てくるアクションもの。すごい組み合わせだけど。
戦争の悲劇については心が痛み未だ記憶に残っているが、それよりも忘れられない強烈な印象は、もう1本の映画の劇中歌で矢沢永吉のバンド「キャロル」が歌う「ファンキーモンキーベイビー」の衝撃だった。

夕方近くになって、私達はまた3キロの帰り道を珍しく黙っててくてく歩いた。
そこで戦争ものの沈痛な思いを振り払うように、2人は耳で覚えたキャロルの「ファンキーモンキーベイビー」を飛び跳ねながら交互に歌い始めた。
矢沢永吉が劇中の舞台で光に包まれて歌っていた場面を再現するように、「君はファンチーモンチーベイバー」「イカレてるよっホー」「だけど恋しいっヒー」「俺の彼女っホー」~
多感だったのか、馬鹿だったのか。ただただ楽しく、打てば響く友人が大切だった。

その後キャロルは解散したが、矢沢永吉の「時間よ止まれ」が出た時に改めてキャロル時代からの楽曲をしみじみと聴いてみた。(知り合いに言えば、いくらでもカセットに曲をダビングしてもらえた)
世代的にはフォークソングからニューミュージックがもてはやされた時代がドンピシャで、当時は洋楽にハマりつつあったのだが、矢沢永吉の色気のある曲が当時も今も大好きだ。

ゆう

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